樋口一葉
長谷川時雨

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)病葉《わくらば》が

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)小伝の主|一葉《いちよう》女史

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)やう/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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       一

 秋にさそわれて散る木の葉は、いつとてかぎりないほど多い。ことに霜月は秋の末、落葉も深かろう道理である。私がここに書こうとする小伝の主|一葉《いちよう》女史も、病葉《わくらば》が、霜の傷《いた》みに得《え》堪《たえ》ぬように散った、世に惜まれる女《ひと》である。明治二十九年十一月二十三日午前に、この一代の天才は二十五歳のほんに短い、人世の半《なかば》にようやく達したばかりで逝《い》ってしまった。けれど布は幾百丈あろうともただの布であろう。蜀江《しょくこう》の錦《にしき》は一寸でも貴く得難い。命の短い一葉女史の生活の頁《ページ》には、それこそ私たちがこれからさき幾十年を
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