ためか、お転婆《てんば》な、悪達者《わるだっしゃ》だともいわれ、莫蓮女《ばくれんおんな》のようにさえ評判された。美妙との関係がそうさせたのでもあるし、そんな、ゴシップ的ばかりでなしに、女流作家のなかでの人気ものにした。
二人の結婚は、誰が見ても、するのが当然のようになっていながら、おそろしく気にされていたが、錦子がその相談に郷国《くに》へ帰ると、すぐあとから美妙斎が追っかけていって、近くの旅館に宿をとって、嫁にもらって行きたいと切り出した。
美妙斎は居催促《いざいそく》でせがむし、錦子はなんでもやってくれという。めんくらった親たちや祖母は、やっと、一家が帰依《きえ》している学識のある僧侶《そうりょ》に相談して、町の人がその問題に興味をもちはじめたのを防いだが、相続人だから千円のお金を附けたということを、町では噂《うわさ》した。
新婚の夫妻となって、作並《さくなみ》温泉から帰って来たのは二十八年の暮も、大晦日《おおみそか》の三、四日前だった。
それと、前か後かわからないが、箪笥《たんす》二十円、ボンネット七十円、夜具ふとん八十円何がいくらと、八十銭のあしだ[#「あしだ」に傍点]ま
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