きの下駄を穿《は》いた、キザな着物を東《あずま》からげにして、題目太鼓の柄にメリンスの赤いのや青いきれを、ふんだんに飾りにしている、ドギツい、田舎《いなか》っぽいものだった。
ドドンガ、ドドンガと太鼓を打って、サイコドンドン、サイコドンドンと囃《はや》した。錦子が通ると錦子に呼びかけるように、
――お竹さんもおいで、お松さんも椎茸《しいたけ》さんも姐《ねえ》ちゃんも寄っといで。といやらしく言って、
――恋の痴話文《ちわぶみ》ナ、鼠《ねずみ》にひかれ猫をたのんで取りにやる。ズイとこきゃ――と一人が唄うと、サイコドンドン、サイコドンドンとやかましく囃したてた。
二階から書生どもはワッと笑いたてた。
錦子はカッとして、どんどん寄宿している叔父の家へ帰ってくると、一層不機嫌になっていた。孝子のところから手紙が来ているといわれても、ちっとも嬉《うれ》しくなかった。
それでも手紙は気になった。急いであけて見ると、
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――先達《せんだっ》ての「見立」の続きをお知らせいたします。あなたの好きな方のお名もありますから、早くお知らせいたしたく、お目にかかるまでとっておけな
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