かく》研究派の方が、頭角を出して来たうえに、言文一致は、二葉亭四迷《ふたばていしめい》の「浮《うき》くさ」の方が、山田より前だのあとだのと論《あげ》つらわれたり、幸田露伴の「五重の塔」や「風流仏《ふうりゅうぶつ》」に、ぐっと前へ出られてしまってはいたが、美妙斎の優男《やさおとこ》に似合ぬ闘志さかんなのが、錦子には誰よりも勝《まさ》ったものに見えもすれば、スタイルも好きだった。
「先生。」
と、彼女は、離れともない思慕もまじえて、
「あたくし、一生懸命になります。当今《いま》どんな方たちが、女で、小説をお書きになってらっしゃいます。」
座蒲団《ざぶとん》の隅を折りながら、うつむきがちに、それでも、ハッキリと言った。
「さあ! 樋口一葉《ひぐちいちよう》という人が、勉強しているというが――三宅《みやけ》龍子、小金井《こがねい》喜美子、若松|賤子《しずこ》――その人たちかな。あなたのように、書こうとしている女《ひと》はあるでしょうよ。」
「その方たち、どういう方なのでございます。」
「小金井喜美子さんは、森|鴎外《おうがい》さんの妹さんです。」
「あ。あの『舞姫』をお書きになった、鴎外先生
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