うまれ給ひてうぶごゑ(初聲)に南無妙法蓮華經と唱へ給ふ歟。法華經云、諸法實相《しよほふじつさう》。天台云《てんだいにいはく》、聲爲佛事等云々《せいゐぶつじとううんぬん》。日蓮又かくの如く推し奉《たてまつ》る。たとへば雷《いかづち》の音《おと》、耳《みゝ》しい(聾《つんぼ》)の爲に聞くことなく、日月の光り目くらのために見《み》る事《こと》なし。定《さだめ》て、十|羅刹女《らせつぢよ》は寄合《よりあひ》てうぶ水《みづ》(生湯《うぶゆ》)をなで養《やしな》ひたまふらん。あらめでたや、あらめでたや。御悦び推量申候
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 次の年に、月滿御前《つきまろごぜん》に經王御前《きやうわうごぜん》といふ妹が出來たが、この時は、もはや佐渡へ遠く流されてゐた。
 この日眼女が三十三の厄除《やくよ》けに釋尊の像を造立供養したので、それに關しては、
 ――厄《やく》といふは、たとへば骰子《さい》に廉《かど》があり、桝《ます》には角《すみ》があり、人《ひと》には關節《つぎふし》、方《はう》には四|維《すみ》のあるごとく、風《かぜ》は方《はう》より吹《ふ》けば弱く、角《すみ》よりふけば強く、病《
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