さんの手腕《うで》を見せた藝妓島田《げいこしまだ》が揃つて――三ヶ日過ぎると、恰好のいいつぶし島田にザングリ結つたのも交《まじ》つて、透き通るやうな笄《かうがい》を一本、グツと※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]したのが、クルクルと細紙《かみ》を捲きつけてくる。白紙《かみ》が湯氣に濕つて――したたれるやうな緑の黒髮に對し、あの、しんめりした感觸――
しかし、今でもさうかどうか。家で※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]したんぢや笄《かうがい》の恰好が惡いし、髮の根がゆるむし。そこで、髮《かみ》を結《ゆ》ひあげるときに※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]《さ》して、笄《かうがい》を惜しまずやつたのであらうが、二三十年も前のことで、今日の錢湯風景を知らないから、なんともいへない。
お風呂場美術――近《ちか》ごろは街頭から、すぐ、ぢかではないけれど、あの、戸を一枚ガラリとあけると、すぐそこが脱衣場《だついば》はいけない。下駄をぬぐところは別にしなければ、いくら本場の美術展覽會をとりし
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