春
長谷川時雨
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)昨夜《ゆうべ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]つて
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ごう/\
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今朝
昨夜《ゆうべ》、空を通つた、足の早い風は、いま何處を吹いてゐるか! あの風は、殘つてゐたふゆを浚つて去《い》つて、春の來た今朝《けさ》は、誰もが陽氣だ。おしやべりは小禽《ことり》ばかりではない。臺所の水道もザアザア音をたて、猫はしきりにおしやれをしてゐる。
町では煙草のけむりが鼻をかすめ、珈琲が香《かん》ばしく、電車のレールは銀のやうに光り、オフイスの窓硝子は光線を反映《なげかへ》し、工場の機械はカタンカタン響々《ごう/\》と、規則正しく※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]つてゐる。
朝はまだバスの女車掌さんにも勞《つか》れは見えないし、少年工も口笛を吹いて、シエパードを呼ぶ坊ちやんに劣
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