らば、そうハキハキと問えるかもしれない、と考えながら、静枝は、
「でも――それでも、お師匠《しょ》さんは、もっと新らしい、書生芝居にもお出なすったのでしょう。」
九女八は、理窟《りくつ》を言う、静枝のみずみずした丸い顔を見て、
「あたしは、こんな、小さな柄《がら》だけれど、毛剃《けそり》だの、熊谷《くまがい》の陣屋だの、あんなものが好き。山姥《やまうば》なんぞも団十郎のいき[#「いき」に傍点]で、彫刻《ほりもの》のように刻《ほ》りあげてゆきたい方だが、野田安《のだやす》さんて、松駒連《まつこまれん》の幹事さんで芝居に夢中な人が、川上さんのお貞さんを助けて出ろと、なんといってもきかないのでね、芸は修業だから出もしたし、それに文士方の新史劇の方は、――史劇は団十郎《ししょう》も気を入れていたのだもの。」
彼女はふと気を代えていった。
「お前さんも、あんな、抱えの芸妓衆《げいしゃしゅう》や、娼妓《おいらん》が、何十人いるうちの、踊舞台だって、あんな大きなのがある、庄内屋さんの家督《あととり》娘に貰《もら》われてて、よくよく芸が好きなればこそ、家を飛出してあたしんとこなんぞの、内弟子になっ
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