》も多い。長唄三味線の方も多い。歌は、音蔵《おとぞう》という立唄《たてうた》いの人の妹で、おかねちゃんという、それは実に好《い》い声の娘と――その人は惜しくも亡くなったが――その姉さんとが主であった。岡田八千代さんも箏の方を助けてくれた。
とにかく、私の友達は、この仕事にみんな手つだってくれた。踊りの方は市川猿之助が主役、女の方の主役は、堀越|実子《じつこ》――市川|翠扇《すいせん》という女優の名で出演し、七人《ななたり》の舞女《ぶじょ》は、そのころの新橋七人組といわれた、小夜子《さよこ》、老松《おいまつ》、秀千代《ひでちよ》、太郎、音丸《おとまる》、栄竜《えいりゅう》、たちだ。この組はこの組で、浅草|千束町《せんぞくちょう》の市川段四郎氏自宅の舞台と、歌舞伎座案内所の表二階とで稽古《けいこ》していた。
楽座の方は、曲の打合せが重なるほど、面白い出来ごとがあった。とうとう、ある日、箏と三味線の正面衝突となって、和三郎がカンカンに怒り出す。鼓村さんは、幾杯もコップの水を呑《の》んだが、それでも熱して、そら豆のゆでたのを盛った大どんぶりのからになったのに、これに水をくれといって、水が運
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