朱絃舎浜子
長谷川時雨
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)木橋《もくきょう》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)鈴木|鼓村《こそん》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)しら/\と
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一
木橋《もくきょう》の相生橋《あいおいばし》に潮がさしてくると、座敷ごと浮きあがって見えて、この家だけが、新佃島《しま》全体ででもあるような感じに、庭の芝草までが青んで生々してくる、大川口《おおかわぐち》の水ぎわに近い家の初夏だった。
「ここが好《え》いぞ、いや、敷《しき》ものはいらん、いらん。」
広い室内の隅《すみ》の方へ、背後《うしろ》に三角の空《くう》を残して、ドカリと、傍床《わきどこ》の前に安坐《あんざ》を組んだのは、箏《こと》の、京極《きょうごく》流を創造した鈴木|鼓村《こそん》だった。
「此処《ここ》は反響が好《い》い、素晴しく好《え》いね。」
も一度立って、廻り椽《えん》の障子《しょうじ》も、
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