ん》の笑い顔を感じて、わたしは卓《テーブル》の人たちを見ると、みんな、呆《あき》れきった眼を丸くしてわたしにそそいでいるのだった。
 あッはッははは。とわたしは男のように声を出してしまった。これが計画で御馳走があったのかと、見破ったからだった。浜子は、あたしのニャアンと言うことなど、あたりまえのことで、なんとも思いはしないことは知りきっているのだが、ただ、浜子の友達のなかに、こんなことを、平気でするものがあることを、吃驚《びっくり》するであろうみんなの前で披露して、呆《あき》れかたが見たかったのだ。それが思い通りだったので、楽しかったのに違いない。お景物《けいぶつ》に、わたしが、それがなんなの? といった顔をして、呆れている友達たちの顔を見たことまでが、予期した通りの好結果であったのだ。
「おかしな人で――」
 わたしはそんなことを思出しながら、笑うとなおと、穿《は》き好《い》いからといって、太いふとい、まむしのような下駄《げた》の鼻緒《はなお》をこしらえさせて穿《は》いたり、丸髷《まるまげ》のシンをぬいて、向う側がくりぬけて見えるような髷にゆったりするので、この部屋に来て坐ると、わた
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