いといけないと思って、一番仲のよいお友達と御一緒にと申しあげましたの。」
一風も二風もある浜子は、その光栄を、軽く頭をさげておいて先刻《さっき》のふくみ笑いをまだつづけている。
合客《あいきゃく》は、ある画伯の夫人と、婦人雑誌で名の知れた婦人記者|磯村《いそむら》女史だった。その人が、欣々さんからの使者にたってて、出ぎらいだったわたしを引出したのだった。
「美人伝は、こちらがお書きになってらっしゃるから、いけないけれど――」
と、画伯夫人は、列伝体のものを、欣々女史の名で集めて残したらよかろうということを、しきりに勧めた。
「そういえば――」
と、それが言いたい、今夜の招待《まねき》だとも知れぬように知れるように彼女は言いだした。
「あたしのように、血縁のものに縁の薄いものがありましょうか、あたくしの母は、十六歳であたくしを生んだといいますが、物心《ものごころ》づいてからは、他人に育てられましたのよ、だから、生《うみ》の母にも逢わずに死なせ、その実母《ひと》の父親――おじいさんですわねえ、その人は、あたしが見たい、一目逢いたいと、それだけが願望だったというのにこれも隔てがあって逢わ
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