ているのでもなく、深い大きな眼に、長すぎるほどな睫毛が濃かった。眉《まゆ》がまた、長くはっきりとしていて、表情に富んでいる。
 ――晴れ曇る、雨夜《あまよ》の、深い暗《やみ》の底にまたたく星影――そんなふうに、彼女の眼はなんにも、口でいわないうちに何か語りかけている。
 彼女が立ったとき、椅子のふちにかけた手は、妖《あや》しく光った。指輪にしてはあまりにきらめかしいと見ると、名も知らないような宝石《たま》が両の手のどの指にも煌《きら》めいているのだ、袖口がゆれると腕輪の宝石《いし》が目を射る、胸もとからは動くとちらちらと金の鎖がゆれて見える。
 彼女の毛は、解いたならば、昔の物語に書いてある、御簾《みす》の外へもこぼれるほど長いに違いないほどたっぷりと濃いのを、前髪を大きく束髪《そくはつ》も豊かに巻いてある。
「こうして、ちゃんとしてお目にかかるのははじめてだけれど、あなたはあたくしのことはよく御存じだから――たったひとつあなたには聴いておいて頂きたいことがあるのよ。」
 彼女はあたしの友達の、箏《こと》の名人の浜子《はまこ》を見てつけたした。
「折角《せっかく》お招き申してもおさびし
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