江木欣々女史
長谷川時雨
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)神田淡路町《かんだあわじちょう》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)見|馴《な》れ
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)海※[#「さんずい+粛」、第4水準2−79−21]《つなみ》
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一
大正五年の三月二日、あたしは神田淡路町《かんだあわじちょう》の江木家《えぎけ》の古風な黒い門をくぐっていた。
旧幕の、武家邸《ぶけやしき》の門を、そのままであろうと思われる黒い門は、それより二十年も前からわたしは見|馴《な》れているのだった。わたしは日本橋区の通油町《とおりあぶらちょう》というところから神田|小川町《おがわまち》の竹柏園《ちくはくえん》へ稽古《けいこ》に通うのに、この静な通りを歩いて、この黒い門を見て過ぎた。その時分から古い門だと思っていたが、そのころから、江木氏の住居《すまい》かどうかは知らなかった。
「この古い門のなかに、欣々《きんきん》女史がいる
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