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美しき裸形《らぎょう》の身にも心にも幾夜かさねしいつはりの衣《きぬ》
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「ねえ、私だって、ああなのよ、こうなのよ、ねえ、よう。」甘えるように私の手をとってゆすぶったりした。私は、「そんなら御勝手になさいまし、ただ、くしゃくしゃ語ったって、私がどうにもして上げられるもんじゃなし。」とつんと突き放したものいいをすると、その時、ほっとためいきをつきながら「もういわないから、かんにんよ。」あの時の少女のような身のこなしが、今も目に浮かんで来てしようがない。
――たあ様の歌は本当の実感から生れたものだった。
私の友よ、友の霊よ、この歌の一つ一つが、貴女《あなた》の息から生れたものなのだ、それぞれに生命《いのち》があるのだ――
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人生の裏も底も、涙も知りつくしたはずの歌人、吉井勇《よしいいさむ》さんが『白孔雀』巻末に書いた感想をひいてみると、
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――今その手録された詠草を見ると、「薫染《くんぜん》」に収められた歌以外のものに、かえって真実味に富んだ、哀婉《あいえん》痛切なる佳作が多いような気がする。私は先ず手
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