紐《ひも》を解いてお鳥目《ちょうもく》をつかみ出して払うのを、家の者に気がつかれないように、そっと女中にくっ附いていって、女中の袖の下から、小さな梟《ふくろう》のように覗いていたあんぽんたんは、吃驚《びっくり》して眼を丸めた。
 あんぽんたんは、自由に外へ出して遊ばせて貰えないので、物干にあがって空を見たりとんぼと話したり、瓦《かわら》の間から、わらじ虫がゆっくり出てくるのを見ていたり、てんと[#「てんと」に傍点]虫を見つけたりする。そんなときに、ずっと向うの、蔵と蔵との間の低い屋根に、小さな小僧が這《はい》出して来て、重そうな布団をひっぱり出して干すのをよく見た。あの金物やの小僧は、なんで毎日ふとんをほすのかと、祖母にきくと、「寝しなに、お餅《もち》を煮て、あったかいのを、一切食べさせてやればよいのだが――としよりもいるのに。」
といったが、その年よりも、小僧も、景気のいい立食《たちぐい》には並ばない。あたしは、すこし大きくなってから、また訊《き》いた。
「なんで、あんなことをするの、みっともないのにね。」
 いつまでも、立食にこだわるようだが、問は、やっぱりそれだった。
「お金があ
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