鉄くそぶとり
続旧聞日本橋・その二
長谷川時雨

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)立食《たちぐい》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)立|並《なら》んでいる

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「月+齶のつくり」、第3水準1−90−51]《あご》
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 あんぽんたんとよばれた少女のおぼつかない記憶にすぎないが、時が、明治十六年ごろから多く廿年代のことであり、偶然にも童女の周囲が、旧江戸の残存者層であって、新文明の進展がおくれがちであったことなど、幾分記録されてよいものであったためか、先輩の推賞を得た拙著『旧聞日本橋』の稿を、ここにつづけることをよろこびといたします。
[#ここで字下げ終わり]

 お夜食におくれて、遅く帰って来た人のお菜に、天ぷらをとりにいった女中が、岡持のふたをあけながら、近所の金持ちの主人が、立食《たちぐい》をしていたということを、
「お薬缶《やかん》のようにテラテラ光って――」

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