。だから、梅毒《かさ》かってたら、なにいうてやの、あほらし、ったんでね、なんのことかとおもったら、それ、やっぱり京女は優しいところがあるのさ。情がうつるかと聞いたんだってえのよ、返事がとんちんかんだから、厭《いや》な奴《やつ》だと思われようってもんさ。だけれど、その時いってたね、東男《あずまおとこ》は金ばなれがいいってさ。そういったってお前さん。貧乏旗本に金なんぞあるわけはないんだが――男振りでもてたのかもしれないねえ。――なにしと、それこそ、なにいうてやの、あほらしいだ。」
「藤木さん、藤木さんも小さい時分、前髪を結ってたの?」
あたしにはそんな駄じゃれはわからなかったから、自分の質問を出した。
「オ・イエース。」
藤木さんは胸を反《そら》して膝《ひざ》の上に両手をおいた。
「秀才だったのだよ。なんて、菅秀才《かんしゅうさい》はお芝居の寺小屋へ出る。他《ほか》の秀才は他人《ひと》のことで榎本《えのもと》の釜《かま》さんなんかがそうだったのだね。僕なんぞはおんなじように、子《し》のたまわくなんてやって、なんの事だかチンプンカンプンだったのだ。だからだめさ、勉強しなくっちゃ、なんでも
前へ
次へ
全13ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長谷川 時雨 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング