」
悲しそうにわざといって唄《うた》のように唄った。
そこでアンポンタンは、武家は精《しら》けた白米《こめ》をもらうのでないという事を知った。どんな風にして、お米を精《しら》けるのかきくと、薬研《やげん》で薬を刻むようにするのだといった。本町辺は薬種《やくしゅ》問屋の多いところなので、あたしは安座《あぐら》をかいて、薬草《くすりぐさ》を刻んでいるのを見て知っていたからよくわかった。祖母の持薬《あいぐすり》を買いにゆくと、種々な薬を集めて、薬研でくだいて袋に入れてくれた事も見ている。徳久利でどうして舂くのかといったら、薬研では玄米《こめ》が破《くだ》けてしまうから、貧乏徳久利で舂くのだといった。
「藤木さんもお米をついたの?」
「私の家は禄高《とりだか》だけ売ってお金にして、入用だけ白いお米で届けてもらったから――ていうと人聞きがいいが、来年の分も、さらい年の分も、金にし貸りてしまうので、よこす米がないってわけさ。浅草のお蔵前に、幕府の米蔵をあずかっている商人があってね、旗本の咽喉《のど》を押えつけたのさ。そこから金にしてもらったり、白米で渡してもらったりしたものでね。清元の唄にある
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