ながら大声で泣出したくなったのを覚えている。そんな風なので、お灸の時、あたしは滝にうたれたように、全身の膏汗《あぶらあせ》にヘトヘトになってしまっているが、おまっちゃんは何処《どこ》までも反撥《はんぱつ》した。お小用だというのが癖で、それで手をゆるめると逃るので、出たければしてもよいというと、小さな彼女はもうお灸の熱さも、乗っていられる苦しさも忘れて、出もしないお小用を絞りだそうと一生懸命になり、目的通りにやると、も一層激しい憤《いきどお》りを母から受けるのであった。
 だから学校でもよく残された。あたしもお相伴《しょうばん》をさせられる。課業のあるうちは、黒板の下へお線香と|茶碗の水《おみず》をもってたたされるのだが、彼女は笑いながら水の中へ線香を突込んで火を消した。お残りは、広い教場へ二人だけ残されるのだ。机を積み重ねた上を渡ったりして二人は仲よく遊んだが、臆病《おくびょう》だったあたしは、夕暮ぢかくなると悲しくなりだした。あたしは別に残っていなくてもよいのだが、どうしても妹を残して帰れないので――そんな時、意地悪く家からはお礼を言いに使いが来たりした。
 もうよい頃と見ると、秋山
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