二、三日のうちに三人もいなくなってしまった。
この西川屋一家も以前《もと》は大門通りに広い間口を持っていた。蕎麦屋の利久の斜向《すじむか》いに――現今《いま》でも大きな煙草《タバコ》問屋があるが、その以前は、呉服|用達《ようた》しの西川屋がいたところである。そこの主人《あるじ》はあたしの祖母の兄で、早くから江戸に出ていた。先妻に縹緻《きりょう》よしの娘を生ませたが、奥女中|上《あが》りの後妻が継児《ままこ》いじめをするので、早くから祖母の手にひきとられ、年下のあたしの父の許嫁《いいなずけ》となった。
後妻は由次郎、鉄五郎、おたけさんを生んだ。父親が歿《なく》なると、男振りのよい忰《せがれ》たちは直《じき》に店をつぶしてしまった――尤《もっと》もそれには御維新の瓦解《がかい》というものがあった故《せい》もあろうが――二人の忰はありったけの遊びをして、由次郎はコレラでなくても長くは生きないようになっていた。
鉄さんが鉄公になったころは散々で、もう仕たい三昧《ざんまい》の果だった。賭博場《ばくちば》を軽《ころ》げ歩き、芸妓屋の情夫《にい》さんになったり、鳥料理《とりや》の板前になったり
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