かいちこ》さんの横顔を眺め、舞踊家林きん子になった、日向《ひなた》さんに、この人だけは面影《おもかげ》のかわらない美しい丸髷《まるまげ》を見た。
「清《きよ》も、よろこんでおりましょう。」
と、もとの座についた、白髪の老人は、重い口調で挨拶《あいさつ》をしていられる。
それをきくと、周囲の人がわやわやとして、
「長い間、お心が解けなかったそうですが、いま、お兄さんがそう仰しゃったので、これで、仏さまとの仲も、解けて――」
と、いうような意味の言葉を、一言《ひとこと》ずつ、綴《つづ》るように言った。とはいえ、解けあわぬ兄妹《きょうだい》でも、遺骨は墓地に納めさせてくれてあったのを、その人々も知っている。墓を建てたのを、差出たことをしたと思われないようにとも、友達たちは老人をいたわるようにいった。
「どういたしまして、よく、あれの心を知ってやってくださる、あなた方《がた》に、こうして頂いた事は、よい友達をもった、彼女《あれ》の名誉で――」
と、兄という人は思慮深くいうのだった。
「あなた方は、彼女《あれ》のことばかりお聞きなさってでしょうが――」
と、老人は、感慨を籠《こ》めて、わたくし
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