たのだ。いたずらに増《ふ》えた髪の霜《しも》でもなく、欠伸《あくび》をしてつくった小皺《こじわ》でもない。
 ――その間に、こんなにも、こんなにも、女人《おんな》の出る道は進展した――
 前の夜《よ》、あまり生々《いきいき》したグループのなかで、何時《いつ》までもいつまでも話しこんでいたあたしは、あんまり異《ちが》った仲間のなかにいて、たしかに戸まどいもしているのだった。年月などというものを、さほどに意識しない日頃であって、何時《いつ》も若い友達と一緒になっていられる幸福のために、かえって、死《しに》もの狂いであった誰彼《たれかれ》なしの過去に、ひたと、面《おもて》をこすりつけられたような思いだった。
 表面《おもて》に、溌剌《はつらつ》と見えるからといって、青春者《わかいひとたち》が、やはり世の中へたつのは、多少とも死もの狂いであるのと同様、先覚者《さきのひとたち》も決して休止状態でいるのではない。おなじ時代を歩んでいるのではあるが、まあ、なんと、今日《いま》から見れば、そんな些事《こと》を――といわれるほどの、何もかもの試練にさらされて来た人たちだろう――
 私は、神近市子《かみち
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