くたはなよ》さんも、外套《がいとう》をもって来ましょうかといってくれた。
 みんなも気がついて、向うへ行っていよとすすめる。焼香もすましているので、あたしは親切な友達たちのいう言葉にしたがった。
 外套にくるまって、火鉢に噛《かじ》りついていると、どんなふうかと案じて来てくれながら、そうではないような様子に、
「おお寒い寒い。」
と、自分も逃げて来たように言って、八千代さんはそこらの障子を閉《し》めてくれて傍《そば》へ来た。
「どう? お寺で風邪《かぜ》なんぞひいたらいけないから。」
 あたしは大丈夫と言いながら丸くなって、友達の顔も見なかった。見たら、涙が出そうでしかたがない。
 みんな、たいした苦労だ――
と、そればかりを噛《か》むように思った。みんな、跣足《はだし》で火を踏んだような人たちだ。今日《こんにち》の若人《わこうど》たちの眼から見たらば、灰か、炭のように、黒っぽけて見えもするであろうが、みんな火のように燃えていて、みな、それぞれ、その一人々々が、苦闘して、今日の、若き女人《ひと》たちが達しるというより、その出発点とするところまでの茨《いばら》の道を切り開き、築きあげて来
前へ 次へ
全38ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長谷川 時雨 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング