遠藤(岩野)清子
長谷川時雨
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)華《はな》やか
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)遠藤|清子《きよこ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
−−
一
それは、華《はな》やかな日がさして、瞞《だま》されたような暖《あった》かい日だった。
遠藤清子の墓石《おはか》の建ったお寺は、谷中《やなか》の五重塔《ごじゅうのとう》を右に見て、左へ曲った通りだと、もう、法要のある時刻にも近いので、急いで家を出た。
と、何やら途中から気流が荒くなって来たように感じた。
「これは、途中で降られそうで――」
と、自動車《くるま》の運転手は、前の硝子《ガラス》から、行く手の空を覗《のぞ》いて言った。
黒い雲が出ている。もっと丁寧にいうと、朱のなかへ、灰と、黒とを流しこんだような濁りがたなびいている。こちらの晴天とは激しい異《ちが》いの雲行きだ。
赤坂からは、上野公園奥の、谷中墓地までは、だいぶ距離があるので、大雨《たいう》には、神田《かんだ》へかかると出合
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