しかも、あたしは押しゃあしないけれど、立会人になった、立派なお歴々の判はおしてあるのですの」
「随分ばかげた事ではありませんか、そんな騒ぎをして、後《のち》に渡してよこした時は、七万からのものが五万いくらかになっていましたって」
と、しげ子さんもいった。私も、
「井上伯とか侯とかは、そんなばかばかしいことでもしていなければ用もなかったのでしょうか、一体まあ立会人ていうのが誰なのです。随分世の中には暇な人が多いと見えますね、たのまれもしないことを」
「本当に頼まれもしないことをです。残していって下さった方は、頼みもなんにもしないことなのに」
「やろうというのは、その者に充分につかわせたいからなのは分っているじゃありませんか。何だって余計なことをしたものでしょうね」
「本当に貴女の仰しゃる通りよ。そのお金だって、いちどきに沢山|儲《もう》ける実業家ではなし、大臣は貧乏だったから、なかなかあれでも心にかけて積んでおいて下さったのです。よけいなものが出来ると、これはお前の分にして銀行へ入れておいてやろうといったり、臨時のことで株券なんぞが手にはいると、お前のものにしておいてやるからといって、そ
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