雪つもる夜の明星かとばかり紫匂ふダイヤモンド、此|指輪《ゆびわ》は彼人の手に日頃光しそれよ白ばらは二人が紀念《きねん》の、さゝやきし其時の息やこもるなつかしやとばかりつく息も苦氣《くるしげ》なり。
兼《かね》が涙ながら來し頃は早暮て、七間間口に並びしてふちん門《もん》並の附合《つきあひ》も廣く、此處一町はやみの夜ならず金屏《きんびやう》の松盛ふる色を示前に支配人の立《たち》つ居つ、何の奧樣一の忠義振かと腹は立どさすが襟《えり》かき合せ店に奧に二度三度心ならずもよろこび述て扨孃樣よりと、包《つゝみ》ほどけば、父親の好《このみ》戀人の意匠、おもとの實《み》七づゝ四分と五分の無疵《むきず》の珊瑚、ゑりにゑりし花笄《はなかうがい》、今宵の縁女となる可、兄より祝物、それを贈《おくる》心《こゝろ》はと父親も主もばあやも顏見合すれば兼《かね》は堪かねて涙はら/\こぼしつゝ外にも一品|花嫁《はなよめ》には幸に見られねど盃受く靜夫はわな/\と、打ふるひぬ、つき上る苦敷《くるしき》思《おもひ》も涙も共に唯一息眼つぶりてのみ込ば、又盃は嫁に※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]りぬきらりと取手《とりて
前へ
次へ
全9ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長谷川 時雨 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング