御祝酒の※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]りて女子供《おなこども》にざれかゝり大聲立て、ばあやにゝらまれこそ/\と出行跡《いでゆきしあと》、ばあやも跡の事心附て自慢のかね黒/\と大奧樣が形見《かたみ》の鼠小紋三紋附着ておよろこびやら、皆々の御禮も兼て。
 さ今の内お風呂《ふろ》にでもおは入《いり》なさつて少し御庭でも御覽なさいまし、おやすみ遊ばしての内私が御附申て升柄《ますから》と、看護婦に替《かはり》しは兼《かね》とよびて年も同十七の氣に入、差よつてほつれ毛をかきあぐればほろ/\と涙《なみだ》白枕《しろきまくら》に毛布に、お孃樣御察申升かねは口惜て/\彼方の奧樣に喰附てやりとう御座升《ございます》、ばあやさんもばあやさんだ貴女の敵におよろこびにゆくなむて、義理だつても私口惜貴女/\はなぜ、御教《おをしへ》申《もうし》たやうに御父樣や御兄樣におつしやらなかつたので御座升よお孃樣、唯心で涙をこぼしていらつしやる柄猶御病氣も重り升わと、主人ながら友達《ともだち》共思ふ仲よしのかうは言《いつ》た物の、言過て病にさわりはせぬかと今更冷汗色をかえての心配顏、嬉敷《うれしい》に附我身のかひ
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