しいなと思ひながら、手紙を書かう/\と思ひつつ段々のびたのと、あれから久しくたつて、やうかんがついたといふので、遠いとこまで足を運んだのでしたが、一度は代人でパスポートがなくてダメ、二度目は休み時間、三度目はとう/\間に合はず羊羮は洋行して歸つてしまつたので、追かけもならず、御心入れをとう/\ムダにしてしまひ、何とも申譯もないと思つてた時の夢だつたのです。元氣でゐて下さい。パリになんかベンベンとしてゐると、だんだん馬鹿になることがわかつてゐるけれど、おいそれとは歸られずに居ます。どうぞ病氣はしないで下さい。やせて返事が消えては大變だから待つてて下さい。
正宗さんの何か集があつたら送つてください。たのみます、なるべく早く。
これはパリ・オペラ夜景。どつしりしてますが、もう汚《よご》れて鼠色です。岡田八千代」
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とした七月二日出の繪はがきは、シベリア經由なのにまる一ヶ月もたつて、二月十日に出して七月末の日に返送された「虎や」の羊羮《やうかん》の小包と前後して私の手《て》に渡つた。
なんで、私が怒つた夢なんぞ見たのだ。悲しがつてゐる夢を見て、早く歸りたい氣持ちにな
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