あるとき
長谷川時雨
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)口《くち》ずさんだり
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)書かう/\と
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[#ここから3字下げ]
むさしのの草に生れし身なればや
くさの花にぞこころひかるる
[#ここで字下げ終わり]
と口《くち》ずさんだりしたが、
「わたしの前生《さきしやう》はルンペンだつたのかしらん。遠い昔、野の草を宿としてゐて、冷《ひえ》こんで死《し》んだのかもしれない。それでこんなに家《うち》のなかにばかりゐるのかしら?」
門《かど》を一足《ひとあし》出て、外の風にあたると、一町も千里もおんなじだと氣が輕くなつてしまふのにと、いふと、出《で》おつくうがる性《しやう》なのを知つてゐるものは手を叩いて笑つた。
今朝《けさ》ふと、雨上りの草の庭を眺めてゐて、海をおもつた。それも涯《はて》しないひろい
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