がまた、たいした手柄をしたやうに傳はつたのだが、前にいつたわたくしの家の「郭子儀」組だつた。姙娠《にんしん》したと祝はれたかと思ふと、急に死んでしまつた。本當のことか嘘か、噂では、嫁入りさきがあんまり堅實《かたぎ》な大家なので、嚴しくて、放縱《はうじゆう》な家庭から嫁《い》つてお腹がすいてすいて堪らず、ないしよで食べものをつまんで、口へ入れたときに呼ばれたので、あわてて飮込んだので死んだと――飮込んだのは醋鮹《すだこ》だともいはれたが――甚《ひど》い惡阻ででもあつたのか、または盲腸ででもあつたのか、それとも、死ななければならないほど思ひせまつたことでもあつたのか? 普通の死ならば、急性疾患でなくなつたのではあらうが、結局古い家憲にしばられて、生家に居たときとは、激しい變りかたが原因ではあつたかもしれない。
と、も一人、親の見立に、もつとも盲順《まうじゆん》したやさしい娘の悲慘な結婚があつた。
その娘の親が惚《ほ》れこんだのは、角店の構へと、居つき地主の持地所で、ちよつと人の目を瞠らせるに足る廣さだつた。商業ぶりも非常に派手だつた。たつた獨りの息子で、老父は――全く老父といつてもよい
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