「郭子儀」異變
長谷川時雨

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)柳里恭《りうりきやう》

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   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]
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 柳里恭《りうりきやう》の「郭子儀《くわくしぎ》」の對幅が、いつのころかわたくしの生家《うち》にあつた。もとより柳里恭の眞筆ではない。ほんものならば、その頃でも萬といふ級の取引であつたらう。或はわたくしのうちにあつた、その寫しものでも今日の賣立などであつたら、矢張り萬とか千とかいふ代物であつたかも知れない。
 それは、とて大幅で、書院がけとでもいふのか、もとよりわたくしの生家《うち》の、茶がかつた床の間には合ひやうもなかつた。幅二間からある本床でなければ、第一丈がたりないといつた立派さだつた。
 一たい、ものが大きいから立派だとばかりはいへないが、この軸はかなり良かつた。素晴らしいとまではいはないが、たしかに立派なものだつた。子供といふものは妙な直覺があつて、巧手《じやうず》、下拙《
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