モクラシーの盛《さかん》に行われる英吉利《イギリス》の如きは、名も形も君主国にして、その品質と色彩は確《たしか》にデモクラシーである。僕のしばしば言うデモクラシーは我国体を害しないものとはこの意味であって、この意味を解さないものは、吾国体を世界の趨勢、人類の要求、政治の大本《だいほん》より遠ざからしむる危険なるものと言わねばならぬ。前に武士に先《さきだ》って武士道の大義が存在したと述べたと同じ理由によりて、僕は政治的民本主義が実施さるるに先って道徳的といわんか社会的といわんか[#「僕は政治的民本主義が実施さるるに先って道徳的といわんか社会的といわんか」に白丸傍点]、とにかく政治の根本義たる所にデモクラシーが行われて始めて政治にその実が挙げられるものと思う[#「とにかく政治の根本義たる所にデモクラシーが行われて始めて政治にその実が挙げられるものと思う」に白丸傍点]。モット平たく言えば民本思想あって始めて民本政治が現われる[#「モット平たく言えば民本思想あって始めて民本政治が現われる」に白丸傍点]。して民本思想とは前に述べた平民道で、社会に生存する御互が貧富や教育の有無や、家柄やその他何に
前へ
次へ
全13ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
新渡戸 稲造 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング