よらず人格以外の差別によって相互間に区別を付けて一方には侮《あなど》り、一方は怒り、一方は威張り一方はヒガみ、一方は我儘《わがまま》勝手の振舞《ふるまい》あれば一方は卑屈に縮むようでは政治の上にデモクラシーを主張してもこれ単に主張に終りて実益が甚だ少なかろう、トいって僕は然《しか》らば政治は圧制を旨《むね》としても思想的のデモクラシーを主張すれば足れりとは信じない。政治的の平等と自由を主張する事は思想の上にデモクラシーを実現する助《たすけ》ともなることなれば、政治的民本主義も鼓吹すべきであるけれども物の順序より言えば一般人民の腹の中《うち》に平民道の大本を養ってその出現が政治上に及ぶというのこそ順序であろう。
米国がデモクラシーの国というのは共和政治なるが故ではない、彼らがまだ独立をしない即ち英国王の司配の下《もと》に植民地として社会を構成した時に社会階級や官尊民卑や男尊女卑の如き人格以外の差違を軽んじ[#「人格以外の差違を軽んじ」に白丸傍点]、また職業によりて上下の区別をなしたり[#「また職業によりて上下の区別をなしたり」に白丸傍点]、家柄[#「家柄」に白丸傍点]、教育を以て人の位
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