の延長[#「平民道は武士道の延長」は中見出し]
かく言《い》えば僕は時代とともに始終考えを変えて行くように聞えるであろうが、時代について用語が異なったりまた重きを置く所も異《ことな》るのは至当の事である。根本的の考えは更に変らない、恐らく昔の聖人といえども時と場合によって説きようを自在に変えたであろう。人《にん》を見て法を説くとは即ちこの謂《いい》である。同じ文字を使っても内容を変えれば一見貫徹している如く見えても意味が異る。その反対に用語を違えても思想に至っては一貫していることもある。
今日とても士道なる文字をそのままに書いてなおその内容に従来の意味と異る思想を含めることは甚だ容易《たやす》い。たとえば明治になって新に士籍とはいわれまいが、広い意味に於ける士の族に昇格したものが沢山ある。学士を始《はじめ》として代議士もあれば弁護士もある。モット広く用ゆれば国士もあれば弁士もある、即ちこの新らしき士族は昔のそれと違って武芸を営むものでない。然《しか》るにいわゆる平民なる一般国民に比してより高き教育を受けた輩《やから》である、随って彼らは名誉ある位置を占め、社会の尊敬を受けるもので
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