五郎(四代)という京都|根生《ねお》いの役者で、これが由良之助をした。あまり上手ではないとの評判であった。人気のあったのは嵐|璃※[#「王+王」、第4水準2−80−64]《りかく》(初代)で、これは若狭助、勘平、桂川ではお半を勤めた。嵐|璃寛《りかん》(二代)は判官、平右衛門、桂川の長右衛門を勤めた。片岡市蔵(二代)は師直、本蔵を勤めた。この市蔵はその頃目が殆ど見えなくなっていたそうだが、そういう様子は少しも見せなかった。女形では尾上菊次郎(初代)が顔世とお軽と長右衛門の女房お絹を勤めた。八犬伝の役割は覚えていない。
 忠臣蔵は私もほぼ筋を知っており、八犬伝はその頃読本を見ていたから面白く見た。璃※[#「王+王」、第4水準2−80−64]の若狭之助が師直に対し切歯する所は余り仰山らしいと思った。この頃璃※[#「王+王」、第4水準2−80−64]は大分年を取っていて、お半になって花道に出た時、頬や衿筋に皺が見えた。璃寛の判官は太り過ぎていたので、見慣れた錦画の判官とは違っていて、品格が無いと思った、しかし平右衛門になってはその太ってるのも似合わしかった。長右衛門になるとまた色男としては太
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