持って来た切棒に乗り、仲間等はカンバンを着て槍を立て草履を持ち、具足櫃もカンバンを著《き》た者が担ぎ、合羽籠といって、雨具を入れたものも城下から取寄せてあとに続かせ、行列揃えて城下に向った、父の如きはさほどの身分でもなくかつ不首尾で帰藩したものであるが、これだけの行列はせねばならなかった。
 途中前にいった衣山を通る時三つのさらし首を見た。青竹を三本組み合わしてその上へさん俵を敷いてそれに首が一つずつ載せてあった。私はさらし首を見たのはこれが初であった。
 藩地の住宅は、普通で帰った者は予め屋敷を賜わったものだが、不首尾で帰った者は、直ちには賜わらぬので、暫く借宅をせねばならぬ。私どもは城下はずれの味酒《みさけ》村の味酒神社の神主の持家を借りた。周囲は田畠で、少しの庭もあったが、全くの田舎住居で、私は道中で始めて見た田舎の景に、ここで毎日親しむことになったのである。
 着いた日には親類や知人が沢山集り、こちらでもうけた物もあり、客の持参した物もあって一同が宴会を開いた。会う人は大概私の初対面の人であった。中には子供も居たが、打解けて遊ぶことは出来なかった。
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   四

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