で、段々と学校の視察員も派遣されて、私は宇和島方面へ行く事になった。そこで、南宇和郡というは、大分県と海を隔てて相対する地方だが、そこの城辺小学校というを視察するため一泊していると、俄に騒がしくなって、今薩州方の軍艦が海岸へ着いたといって、荷物などを片付ける者もあった。そこで私も全く賊軍中に陥ったので、ひどい目に逢うだろうと驚いたが、逃るる路もない、刀を仕込んだ杖一本は携えていたけれども、実に心細い感がした。しかるに右の騒ぎは全く間違いであって、海岸に着いた軍艦は官軍の援兵で、大分県へ赴く途中碇泊したという事が分り、私もホット安心した。そのうち私の止宿している宿屋へも官軍の賄をせよといって来るし、そこらここらに往来する兵隊も見た。それが俄か製の粗末な小倉か何かの服で、鉄砲の外腰には長刀を佩びていた。これは例の抜刀隊に当る覚悟なので、多く、会津、仙台辺りの士族であった。そうして彼らは往年己れ等を賊として攻めた官軍の大将西郷が、今度はアベコベに賊となったから、復讐的に官軍となって征伐するという、或る敵愾心を持っていたのである。私はこんな事で、そこそこにこの地は引揚げた。なお宇和島から遥に隔
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