、その先発は城下から七里離れた山分の久万《くま》山であった。この久万山は浮穴《うけな》郡の一部分であるにかかわらず従来一郡として取扱われていた位広い地域であるが、その全部が互に申合って、竹槍蓆旗で城下へ強訴するという事になった。かような騒ぎが起っては、第一朝廷に対しても済まぬというので、当局はいずれも心配した。就中久万山租税課出張所の権大属藤野漸氏は種々説諭もしたが、なかなか聞き入れぬ。そこでこの上は兵力を以て鎮圧してもらう外はないといって、単身藩庁へ駈け着けた。けれども大参事鈴木重遠氏は剛胆であったから、未だ兵力を借るには及ばん、自分で説諭するといって、少参事長屋忠明氏を具して数人の属官と共に久万山へ赴いた。そうして、租税課出張所において二、三の頭立つ者を呼んで説諭しようとしたが、誰れも出て来ない。かえって総勢はその出張所の門前を吶喊《とっかん》して過ぎ行きいよいよ城下の方へ向う様子となった。そこでやむをえず鈴木氏も長屋氏と偕に藩庁へ引揚げたが、さすがにまだこの両氏の一行に危害を加える者はなかった。しかるに租税課の少属重松約氏は、いらぬ事だに一人洋服を着ていたから、暗夜の事といい群衆
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