も説諭がしたい、また藩の役人達の説諭の様子も見たいとあったので、町会所という所へ信徒を呼び寄せ、庭へ筵《むしろ》を敷いて坐らせ、権太丞始め我々の藩吏は座敷やあるいは縁側に居並んだ。それからまず権太丞が信徒に向って説諭を始めた。随分厳正な態度で声を荒くして叱りつけるように言ったが、信徒の中の何とかいう頭だった一人が、何らの怖れ気もなく、答弁して、上帝や基督《キリスト》の威霊を主張し、貴君方の御役人がそれを信仰せられないのが、かえって不都合だというような事まで言いかけた。中野はそれを『黙れ』と一喝してやはり説諭を続けた。そうして別席へ退いて、私どもへいうには、今日かように烈しく言ったのは、わざと敵役に廻ったのであるから、藩の方々は、これに反して、温和に説諭さるるがよい、その方が利き目があろうと注意した。そこでこれから私が説諭せねばならぬのであるが、未だ書生上りの無経験者であるから、伊佐庭史生に代って遣ってもらった。この人は弁舌もよく、多少の心学道話などの心得もあったから、権太丞の注文通り温和で寛大なる態度を取り、色々と譬えなどを引いて、なかなか巧く説諭をした。この時も信徒の頭だっている某は
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