のは純金にし、次は純銀にした。私の同僚でも長屋氏は金があったから、東京へ出張して帰った時金刀を閃かしていたが、私は貧乏だから、やっと銀刀を造ってその真似をした。
この藩政改革に引続いて藩知事公新邸が出来た。これまで代々の藩主は三の丸に住まわれて、或る点においては公私混合という風であったが、朝廷からの命令で、藩主の暮し向きは、藩の収入十分の一を下附せらるるという事になり、その暮し向きの変更からも別に居宅を構えらるるの必要が生じて、即ち知事の官宅という姿でかような新邸が出来たのである。この新邸落成の祝宴には参事一同をも招き酒宴を開かれたが、以前は家老でさえも膝行して盃を賜わるという風であったのを、そんな虚礼はやめねばならぬといって、知事公と同席で盃の献酬などもして、酔いが回ると雑談もするので、君公に近侍の家職の人達などは、いささか眉を蹙めたが私などは反動的に随分平民主義の態度を執ったのが今から思えば可笑しい。
その少し以前藩庁の建っていた三の丸が焼けた。これは大賄所という支度を司る役所の引けた後小使部屋から出火したので、既に私どもは退庁していたが、聞くと直に馳け付けたけれど、火勢が盛ん
前へ
次へ
全397ページ中253ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
内藤 鳴雪 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング