その光景をちょっと珍らしく思った。それから随分疲れたのは和田峠を越える時で、別に急坂ではないが爪先上りの登り道が長いので一行も段々とへたばった。峠に立て場があって、赤飯を売っている、それを疲れた余りたらふく喰って少し腹を痛めた。この立て場は往年筑波山の落人で有名なる藤田小四郎が休息して、『将軍酔臥未全醒』、と詠じて壁に記したとの言伝えがあるが、それは後に聞いたので、私は見ずにしまった。それからこの峠を下ると諏訪である。温泉もあるが入らずに通った。ただ諏訪湖の向うに富士のうしろ姿を眺めた景色は今も目に残っている。それから或る駅に泊った時夕飯の菜に、丸く小さい二寸ばかりのものを幾個か皿に盛って出した。ちょっと見てなんだか判らん、かつて聞く所では、木曾の山中の人は蛇を喰うというから、この丸い長いものもあるいは蛇の付焼きではなかろうかと思って、私ども一行は互に顔を見合わせて箸を付け得なかった。そこで給仕の女に聞いて見ると、なんの事だ、チクワであった。喰っては豆腐だか何だか判らぬような味だが、これでも木曾山中では珍味としていたものらしい。宮越駅辺には路傍に旭将軍義仲の碑が建っていて、その兵を挙ぐ
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