となった。
 この頃朝廷には諸藩の重役の職名を一定されて、執政参政というものを置かれたので、我藩でも家老は総て執政となり、参政に当る職はこれまで無いのだから、新に抜摘を以て命ぜられることになり、私の父も参政となった。また父と反対党とも目されていた戸塚助左衛門も同職となった。この戸塚は去年要路者排斥建議の殆ど主謀であったから、行為不穏というのでこれも要路者の責罰と共に責罰されて目付願取次となっていたが、その頃或る夜白衣のままで私の宅へ来て、父とは旧同僚でもあった辺から、一個人としての打解けた談をした。父ももとよりそこは同じ襟懐だから、長い時間膝を交えて談し合った。ここらはちょっと面白い交際であったのだが、料《はか》らずまた職務上でも坐席を並ぶることになったのだ。なお父の役については、前にいった勘定奉行になって、間もなくまた目付役に復していたのだが、この度家老に次ぐ重職となったので、私の一家は俄に家来なども多くなるし、家内が総て御歴々生活をすることになった。尤もこの年の七月に曾祖母も亡くなっていたので、今は継母と末弟彦之助と父と私とのみになったのである。
 この曾祖母は向井氏で藩では有名な
前へ 次へ
全397ページ中219ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
内藤 鳴雪 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング