飯を入れた飯櫃が出る。これも側役と御膳番とが立会で、各々口を袖で覆うて杓子を以て、掻き交ぜて検査した上で出すのである。この飯を盛る役は当番の小姓中で最先輩に限られている。また茶は坊主の今いった、御居間方の次へ付く者が兼て用意をしていて差し出す。これには何故か御毒見はない。尤もこの坊主は、御居間へは出られないから小姓が取次ぐのである。世子の膳具は黒の漆塗りに金で蒔絵がしてあって、中は朱であった。膳も同じ蒔絵である。そこで飯櫃を司っている小姓は最初の一椀を盛る時杓子で飯櫃の飯の上へ久の字を一字書く真似をする。そうして盛って出すが、盆は用いないで、椀の底の方を手で持って出す。世子は小食であったから、大抵二椀位で稀には三椀食われた。副菜は一汁二菜と外に漬物一皿と限られていたが、一椀の飯を尽されると共に一人の小姓は直に下って代りの汁椀を持って出てそれと引替える。汁の外は、平が一つと皿に焼肴とか煮肴あるいは刺身位が盛ってあるのだが、その平の蓋は必ず、小姓が取ったものである。この副菜は御膳番の方で大体好かるる物や好かれぬ物を知っているから、一度ごとに選んだものであるが、さりとて世子が何を食べたいとか
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