、暗中で悪戯におどかされたり、ひどい目に合わされたりした。また蒲団蒸しといって、或る一人を蒲団に包んで圧伏せ、息も断え断えにさせた事もあった。しかし私は自分の学力や父の役目の関係から、別段人にいじめられたこともなく、かえって荒武者連中にも多少は憚られて、『助さんが居る』とか、『助さんに聞える』とかいって、何ら腕力もなく武芸も劣等なものながら、どうかこうか好い境遇を得ていたのである。
ついでにいうが、右の如く市中へ肉など買いに行くという事は、婢僕を使っている士分の家では主人は勿論家族でも多くはせなかった。もし買う事があれば、僕を遣わすか、あるいは宅に呼び寄せて買うので、呉服小間物類は別として、そうしていた。そこで私は父の役目もあるから一層この束縛に就いていたのだが、或る年忘年会の幹事に当ったので、他の幹事に率いられて肉を買いに行った。夜分とはいえ少し極り悪く感じていると、他の者が『助さんはさぞお困りであろう。』といって労わりながらも冷やかしたことがあった。
この寄宿舎は食事だけは藩命の者と否《あ》らざる者とを問わず、藩より支給せられて、多くは賄方が請負で仕出をしていたが、あるいは小使
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