って振廻した。そのために居合せた矢野、馬島、川端の三人は各々多少の手疵《てきず》を負った。外に竹内宇佐美というが居たが、竹内は早く帰宅し、宇佐美は残っていたが幸に疵を負わず、うまく新海を抱き止めた。その内他の人々も来て燈火を点し、総がかりで遂に荒狂う新海を縛してしまった。
 一体いずれの藩にあっても、士族の私闘という事は厳しく戒めてあったが、殊に私の藩では厳しかった。そして一人が抜刀した時に少しでも傷を負う事があれば、傷を負わせた者も、負わせられた者も、双方共に割腹せねばならぬということになっていた。そこで右の如く新海が抜刀して、三人の者に手傷を負わせたのであるから、四人ながら割腹せねばならぬことになった。新海をたかりに行った三人等は、さぞ後悔した事であったろう。尤も一時は新海を発狂という事にして無事に納めようとした者もあったが、当人の新海は飽くまで正気であると主張するし、また警衛場においての私闘は最も戒《いましめ》ねばならぬというところから、藩でも特に制裁を厳にし、遂はいずれも割腹させられる事になった。
 この時新海はさすがに立派に割腹した。即ちそれを見ていた人の話を私は聞いたが、彼
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