この年貢米はもっぱら国家に対して御軍役その他を勤めるために取っているので、藩主一家の生活は言わばその余りを以て弁ずるはずなのである。それから藩士へ何千石何百石と言って与えるのも、その実はヤハリ呼高の四分を与えるので、禄を貰っているのは藩主の負担した御軍役等を禄高だけその下受負をする訳なのである。して見れば藩主が、国家のために多くの費用を要する事があれば、また士族どもにおいても貰っている禄の中を削減せられるは、義務としてやむをえざる事である。その他、町人百姓等は義務ではなけれど、常に政治の下に太平の恩沢を蒙っている冥加《みょうが》として、その太平を保つに必要な費用には、自分等が生計を節約しても、出銀出米の御用を勤めねばならぬのである。
さて、こんな風で私の藩地等でも日本国内が多事になると共に、藩士の江戸へ勤番することも漸次頻繁になって来た。殊に神奈川警衛については絶えず多数の人が交代せしめられていた。右の砲台の出来上った事については、幕府から賞典があって、藩主に対しては特に少将に進められ、家格等も特別の扱いを受くる事になり、築造に関係した藩士どもには、家老以下一同へ幕府から賜わり物があ
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