前にもいったが、学生はそれに出る事は出来ず、学生のためには一ヶ月に度々輪講とか会読とかがあって、それには寄宿生初め、われわれ外来の学生も出席が出来るのである。私は右の輪講会読等へはまだ憚る気がして出なかったが、五等以上の者ならば誰でも行って、館の蔵書を借覧する事の出来る独看席というが設けてあったので、そこへは日々行って勉強した。
私は以前からもそうであったが、この頃からいよいよ歴史を読む趣味が加わって歴史物を主として読んだ。宅には父が読むので『歴史綱鑑補』があったから、それは既に読んでいて、父から教えてもらった事もあった。その綱とあるのは朱子の通鑑綱目《つがんこうもく》で、鑑とあるのは司馬温公の通鑑である。この二書の要領を抜いて、批評を加えたものだから、綱鑑補の名があるのでこれは明の袁了凡《えんりょうぼん》の著である。このお馴染で通鑑と綱目の二書を知っていたから、まず後者から初める事にした。これには朱子の正篇の外に宋元及明史の綱目もあり、また前篇というもある。それに朱子が春秋に傚《なら》って書いたという事につき、『書法』『発明』というがあって、褒貶の意のある処をそれぞれ説いてあるから
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