斷じて色ではない[#「斷じて色ではない」に傍点]。
 リズムは昇天する。調子は夕闇の草むらで微動する。

 我と人との接觸、我と物象との接觸、我と神との接觸、我と我との接觸、何物も接觸にまさる歡喜はない。この大歡喜が自分の藝術である。

 自分は神と接觸せんとして反撥される、自分は物象と接觸せんとして反撥される、自分は戀人と接觸せんとして反撥される。その反撥の結果は、何時も何時も、我と我とが固く接觸する。接觸の所産は詩である。

 未來、自分は感傷の涅槃にはいる、萬有と大歡喜を以て、接觸することが出來る。現在、及び過去の自分は未成品である。道程である。[#地から2字上げ]――人魚詩社宣言――


 遊泳

 白日のもと、わが肉體は遊樂し、沒落し、浮びかつ浪を切る。

 けふわが生くるは、わが遊戲をして、光り、かつ眞實あらしめんためなり。わが輝やく城の肢體をしてみがきしたしく魚らと淫樂せしめてよ。

 奇蹟金銀
 祈祷晶玉
 海底詠嘆
 海上光明

 しんしんたる浪路のうへ、祈れば我が手につながれ、あきらかに珊瑚の母體は昇天す。

 母體は昇天す、このときみなそこに魚介はしづみ、いつさい
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