な苦痛の絶叫をたれ一人として聞いてくれたものは此の地上にない。
私はいつでも孤獨である。言語に絶えた恐ろしい悲哀を私一人でじつと噛みしめて居なければならない。生きながら墓場に埋められた人の絶望の聲を地上のだれがきくことが出來るか。
私が根かぎり精かぎり叫ぶ聲を、多くの人は空耳にしかきいてくれない。
私の頭の上を蹈みつけて此の國の賢明な人たちが斯う言つて居る。
『詩人の寢言だ』
此の國でいちばん眞實のある人間は詩人である。少なくとも彼等は自分の藝術を賣物にして飯を食はうなどとは夢にも思つて居ない。(實際に於てもそれは不可能だ)。
考へても見ろ、どんな種類の人間が、肉を削るやうな苦しい思をして一文にもならない勞作をして居るか。言ふだけのことを言ひ切らねば、私は干物になつても死にきれない。
自分の言ふ言葉の意味が、他人に解らないといふことはどんなに悲しいことであるか。自分の思想が他人に理解されないといふことは死刑以上の苦しみではないか。
私はまいにち苦行僧のやうな辛苦を嘗めつくして居るにもかかはらず、私のもつて居るリズムの百分の一も表現することが出來ない。
けれども萬一
前へ
次へ
全67ページ中27ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
萩原 朔太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング